現代の国際社会において、各国がどの程度の軍事費(防衛費)を投じているかは、国際情勢や安全保障の現状を知る上で重要な指標の一つ。
軍事費の多寡は、その国の防衛戦略や地域の安全保障環境、さらには経済力をも反映しています。
この記事では、世界の軍事費ランキングTOP10を紹介。
これらの国々は、最先端の兵器開発や軍備増強に巨額の予算を割り当てており、その規模は他国を圧倒。
その背景には、地政学的な競争や国際的な影響力の維持といった多様な要因が絡んでいます。
なぜこれほど多額の費用が必要とされるのか?
その理由をランキングを通じて探りながら、現代の安全保障における各国の取り組みと、その意図をひも解いていきます。
第10位 日本 502億ドル
日本の軍事費(防衛費)は約502億ドル。
憲法9条の制約下で「専守防衛」の方針を維持しつつも、近年は地域の安全保障環境の変化に対応するため、防衛費の増額が進行中。
兵員は主要国に比べ多くないものの、ミサイル防衛システムや潜水艦など、技術力を活かした装備が特徴。
インド太平洋地域の安定を目指し、同盟国との協力も強化しています。
「防衛力強化計画」を背景に、予算と政策の両面で変化が見られる日本。
その進路が国際的な注目を集めています。
第9位 フランス 613億ドル
フランスの軍事費は約613億ドル。
核抑止力を含む「フランス独自の防衛戦略」が特徴で、他国に頼らない自立した軍事力を目指しています。
空母や潜水艦、戦闘機など、多様な装備を持つ一方、アフリカ地域への軍事介入も積極的。
多国籍軍の主導的役割を果たすことも少なくありません。
EUの防衛政策において、中心的役割を担うフランス。
外交力と軍事力を一体化させた政策が、その存在感を高めています。
第8位 ウクライナ 648億ドル
ウクライナの軍事費は推定で約648億ドル。
ロシアとの紛争が激化する中、防衛費の大幅な増額が避けられない状況です。
国際支援も軍事力の維持を支える一因。
国内生産と輸入を組み合わせ、迅速な装備拡充を実現。
特に、西側諸国から供与される最新装備が防衛力を支える重要な要素となっています。
国土防衛への強い決意が、軍事費に反映。
経済規模に対して非常に大きな割合の予算を投じ、戦術と装備の両面で注目を集めています。
第7位 ドイツ 668億ドル
ドイツの軍事費は約668億ドル。
第二次世界大戦後の歴史的背景から、平和主義的な防衛政策を取ってきましたが、ウクライナ情勢の影響で防衛費を急増させています。
EUのリーダーとして、地域の安全保障に責任を持つ役割を強化。
新型戦車や航空機の開発、NATOへの貢献拡大が主な目的。
産業基盤を活かした軍需産業の成長も注目すべき点。
経済大国としての地位を背景に、防衛政策の転換を進めています。
第6位 イギリス 749億ドル
イギリスの軍事費は約749億ドル。
NATO加盟国としての責任とグローバルプレゼンス維持が防衛政策の中核をなします。
航空母艦や核抑止力を含む多様な装備が特徴。
近年は、インド太平洋地域への関与を強化。
新型戦闘機や人工知能を活用した防衛システムの開発にも注力しています。
ブレグジット後の存在感維持を模索中。
防衛予算の増額計画が進行中で、経済や外交とのバランスが注視されるポイント。
伝統的な軍事大国の地位をどう維持するかが課題です。
第5位 サウジアラビア 758億ドル
サウジアラビアの軍事費は約758億ドルで、世界有数の規模。
石油収入を背景に、高価な装備を積極的に購入しています。
中東の安定を維持するための軍事力強化が狙い。
アメリカやヨーロッパからの武器輸入が多く、高性能な航空機やミサイル防衛システムを保有。
一方で、イエメン内戦などの影響が防衛費を押し上げています。
地域覇権を巡る競争の中で、その軍事力が外交力の一環として機能。
経済構造改革と並行した軍事政策が今後の焦点となっています。
第4位 インド 836億ドル
インドの軍事費は約770億ドルで、世界でも上位にランクイン。
地域大国として、パキスタンや中国との緊張が防衛費を押し上げる主要な要因です。
陸軍を主体としながらも、海軍や空軍の近代化も進行中。
特に国産装備の開発に注力し、輸入依存を減らす動きを強化しています。
宇宙やサイバー領域の防衛力強化も注目ポイント。
世界第2位の人口を背景に、人的資源を活かした軍備の維持が可能。
ただし、効率性や装備の質についての課題も指摘されています。
第3位 ロシア 1095億ドル
ロシアの軍事費は約1,095億ドルと、中国やアメリカには及ばないものの、GDP比では高い割合を占めます。
冷戦時代からの軍事大国としての地位を維持するため、核兵器や極超音速ミサイルの開発に注力。
近年はウクライナ侵攻による戦費の拡大が影響。
経済制裁下にあるにもかかわらず、軍備増強を続けており、その持続可能性に疑問を呈する声もあります。
その一方で、高性能な防空システムや戦車などの輸出が国庫を支える一因に。
軍事技術大国としての存在感を示しています。
第2位 中国 2,964億ドル
中国の軍事費は約2,964億ドルで、アメリカに次ぐ規模。
近年急速な経済成長に伴い、防衛予算も増加傾向を見せています。
特に海洋進出を視野に入れた軍拡が顕著。
最新鋭の空母やステルス戦闘機の開発、人工知能を活用した無人兵器の導入など、技術革新への投資が進む一方で、台湾海峡や南シナ海での緊張が影響を与えています。
防衛費の大部分が国営企業を通じて国内経済に還元される構造も特徴的。
軍事と経済の一体化が、国際社会の注目を集めています。
第1位 アメリカ 9,160億ドル
軍事費ランキングで圧倒的な首位に立つアメリカ。
その防衛予算は年間9,000億ドル(約138兆円)を超え、日本の国家予算(約110兆円)すらはるかに凌ぐ規模。
世界全体の軍事費の約40%を占めており、陸・海・空の全分野において最先端技術を駆使した装備を維持しています。
その背景には、世界各地に展開する米軍基地や、NATOとの連携を含む多国間同盟の維持が挙げられます。
また、次世代兵器や宇宙防衛への巨額投資も進行中。
経済だけでなく軍事的なプレゼンスを通じ、国際秩序のリーダーとしての地位を確保する狙いも。
ただし、この莫大な支出は国内外で賛否両論を呼ぶ要因ともなっています。
世界の秩序を守る存在としても世界中から期待されるアメリカ。
このアメリカの軍事政策は、つねに注目を浴びる存在です。
世界の軍事費(防衛費)ランキングTOP10の一覧
順位 | 国名 | 軍事費 |
---|---|---|
第1位 | アメリカ | 9160億ドル |
第2位 | 中国 | 2964億ドル |
第3位 | ロシア | 1095億ドル |
第4位 | インド | 835億ドル |
第5位 | サウジアラビア | 758億ドル |
第6位 | イギリス | 749億ドル |
第7位 | ドイツ | 668億ドル |
第8位 | ウクライナ | 648億ドル |
第9位 | フランス | 613億ドル |
第10位 | 日本 | 502億ドル |
(出典:SIPRI 軍事費データ 2024年4月版(PDF))